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プロジェクトの方程式

ゴールの「根」。

プロジェクトには方程式がある。そういっても過言ではありません。では天才しか解けないのか、と言われれば決してそうではありません。少し、数学の方程式の話をしましょう。まず、方程式の目的は「未知数」と呼ばれる数字を明らかにすることがその目的のひとつにあります。たとえば、1+2+3=6という式があったとき、1+x+3=6と書いてあれば、未知数は「2」と説明ができます。解き方は、x=6-3-1です。複雑な方程式は未知数が増えていき、解き方も複雑になりますが、目的は同じです。
では、なぜこの方法がプロジェクトに当てはまるのか。それは、方程式においても、プロジェクトにおいても常にゴールが見えているところにあります。つまり、1+x+3=6でいえば6という数字です。プロジェクトにおいては、売上目標や財務的な数字です。そのゴールに向かって常に未知数が何かを考えるプロセスが共通なのです。ちなみに、方程式における未知数は「根」とも呼ばれ、すべての根を明らかにすることが「解」だとされます。プロジェクトのゴールに向かうための課題の「根」がクリアになれば、目的に到達することは容易になることは言うまでもありません。

「顧客」という「未知数」。

ひとつの例を考えてみましょう。A社においてある製品を作るプロジェクトが立ち上がりました。この時、ゴールはすでに設定されています。どのくらいの売上を目的にするのか、または、企業にどのようなバリューをもたらすのかです。そして今、自社にどのような技術があり外注ネットワークがあるのか、製造方法、納期すべてが揃っているとします。しかしここに絶対的な「未知数」が存在します。「顧客」です。BtoBでもBtoCでも同様です。特にBtoCにおいてこの問題はより高度なものになります。時代は変遷し、お客様は常に変化しているからであり、さらには不特定多数の消費者を満足させなければならないからです。会員サービス、ネットを活用したレビュー、既存商品からの読み取り、マーケティングなどあらゆる方法は、この「未知数」を把握するための方法論として強化されてきました。言い換えれば、すでに顧客がくっきりと見えている製品やサービスは常に方程式が自由に組みやすいということになります。
仮にお客様が不明でも、技術的に製品ができあがることもあります。しかし、製品ができただけではお客様に届けるプロセスの3割程度が終了したに過ぎません。製品が完成してからすぐに営業プロセスに移行するケースもありますが、方程式の未知数が明らかになっていない状態では、商品のアフターケアのための体制や、保険、小売店への戦略などの構築が難しい。営業活動もあらゆるパターンをしらみつぶしに当たることになり、効率が極めて悪いのです。コストも膨らみます。結果的に、方程式は解けずにプロジェクトが胡散霧消するか、ノウハウが社内に残らず、「あんなプロジェクトもやったけど」といった評価に甘んじるケースとなりがちです。

企業の最も身近な顧客。

そ未知数である顧客に関する仮説を構築するのに、最もスピーディな方法は利害関係者(ステークホルダー)を今一度理解しなおすことです。基本的に利害関係者は「蓄積された顧客の一形態」と言っても良いでしょう。もちろん、BtoBからBtoCの顧客すべてを含みます。利害関係者にも様々なタイプがありますが、基本的には自社の内情に近しい人々です。したがって、利害関係者が一般人として生活している時にでも自社のことをポジティブに話しているならば、外部から見たときの信頼性が相当に高いと考えて良い。特に、自社のスタッフが積極的に自社の製品などに自信を感じている時はより良いと言えます。ただし、会社における利害関係者の中で唯一の例外は経営者です。経営者は個人でありながら法人の代表ですから、この2つの人格にまたがる発想となるので一般人と呼ぶのは危険です。
さて、この仮説構築にあたって注意すべき未知数が存在します。「利害関係」そのものです。自社との間に利害関係が生じると、どうしてもバイアスがかかり意見が偏ります。この偏りは、コミュニケーション技術でチューニングが可能です。すでに生じている利害関係そのものをゴールとする方程式を組み上げ、どこが偏っているのかの未知数を探すことでクリアできます。こうして、利害関係者をベースにした「顧客」という未知数に関する仮説を構築することができます。

コミュニケーションへの理解。

これで方程式の要素が出揃い仮説が組み上がりました。あとは行動あるのみです。プロジェクトの方程式で組み上げた仮説を、行動により実証し、知見としサービスや製品の品質向上へとつなげていくのです。そして、未知数を把握する行為には必ずコミュニケーションが絡みます。コミュニケーションとプロジェクトを密接にリンクさせることによって、未知数の導き方と解決そのものがスムーズになると言って良いでしょう。方程式を意味するequationという英語は、ラテン語の動詞「aequare水平にする」が語源だと言われています。もともとはひとつのものを同じ量に分けるという意味で使われていたようです。プロジェクトの未知数がすべて同じで、難易度も均一であると言い切るには、あまりに複雑な時代です。プロジェクトの方程式を解く行為はequationという感覚を常に保ちながら、未知数である顧客に対する鋭敏な感性を養うことそのものだと言えるでしょう。
数値化された感情のバロメーターをみて「今日は幸福みたいだね」「いやそうでもないんだけど」「でも、ここにこう出てる」「ああ、じゃあ、こういうことが先週あったから・・・」といった会話が始まるかもしれません。
表示された分析が本当と違っていてもいなくても、今起きている事を伝えるきっかけや相手が何を考えているのか気を配るきっかけになればと考えます。そしてこのきっかけが社長と社員の間に生まれるズレを少しでも緩和させる事に繋がれば幸いです。
使用を始めると、カメラを向ける事自体に気が引けたり会話のきっかけになるワードも提示して欲しいなど様々な課題が浮き上がってくるでしょう。まずはその課題をより明確にするためにも、私たちはコミュニケーションのきっかけを作り、検証を続けます。

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