FUKAIRI

未来ジオラマ

フカイリでは、常に未来を想像するようにつとめています。それも、できるかぎり細部にわたって。これは、大規模なジオラマを作る作業に似ています。高精度であることを義務付けており、リアルタイムで変化することを良しとしています。ただしそれぞれの頭の中で、ですが。

作業はまず、未来全体のアウトラインを構築することから始めます。基本的なニュースや企業のプレスリリース、世界の先進的なアントレプレナー達の未来予測、大企業の経営戦略などを斜め読みしながら構築していきます。だいたい、30年先、10年先、5年先、3年先、1年先といった具合で作ります。20年前には10年ひと昔だった時代が、いまのAIの進化は1年で生命の1億年分くらいに相当しますから、正直30年から先はもはや想像してもあまり意味がなく、どちらかといえば、そこは空想に頼ったほうが圧倒的に楽しいですし、未来予測としての精度が高いと考えています。そういう意味ではSF小説は素晴らしい資料となります。従って精度を高める未来予測のメインは10年先です。ここが捉えられれば因数分解することで1年後も、5年後も、設定は自由自在です。

次に、超細部の未来予測を立てます。これは、我々の仕事から得られる情報がメインとなります。ゆえに、こちらはものすごく具体的です。たとえば、数年前にナノ研究施設のアニュアルレポートを2年に渡り作成する案件がありました。フカイリは原稿作成と全体の冊子構造の設計を行いました。この時、様々な研究者のインタビューを実施しています。中には、金属の分子内から電子を切り離すことで、原子が不安定になり発光したり振動したりする話もありました。我々の仕事は、常に最先端の情報に触れます。それが、小さな会社の製品の話でも同様です。その企業にとっては、未だ世に出していない考えを我々がアウトプットするのですから自ずとそうなります。同時に我々は、その企業のことを徹底的に調べると同時に、マーケット、利害関係者、新規市場などについても経営レベルでの把握を行いますから、未来予測を分野ごと企業ごとに実施します。

この超細部の情報こそが、フカイリの未来予測における最大のポイントです。たとえば、ナノの話で言えば、太陽光で発電するナノ素材の開発などが行われていました。エネルギー効率の話もあった。となれば、たとえば太陽光の発電はパネルではなく、塗料などに応用されるようになる可能性があると仮説ができます(実際になるかはわかりませんが)。もし塗料になればエネルギーの革命が起きるでしょう。曲面が活用できるようになりますから、ビルの窓、車、家など、あらゆる部分が発電できるようになります。少なくとも、そうした人間の要望は厳然と存在しているのですから、技術が存在すればかなりの確率で世の中はそちらの方向に動いていきます。こうして、超細部の未来予測をあらゆる分野の仕事を通じて行っていくことで(中には葬儀会社のものもあれば)、社会全体の未来ジオラマがくっきりと描き出されてきます。

この未来ジオラマを、フカイリの社内においては日常的なミーティングではぐるぐる回しながらみんなで共有するようつとめています。そうすると今度は、それぞれが持っているクリエイティブの技術レベルでの表現の未来がブレストされることになります。同時に、未来を変える変化点や分岐について考えることになります。当然、無数にこうした変化点がありますから、我々が日常的に触れる情報は多岐に渡ります。これが、フカイリのミーティングのベースになっています。このためにゲームもしますし、本も読みますし、食事からも、街並みからも、広告からも、人からも、美術館からも世の中のあらゆるポイントで思考していきます。こうして未来シュミレーションを繰り返しながら未来予測の精度を我々なりに高め、コミュニケーションの主体となる個人格や法人格に最適なクリエイティブを構築しています。そのアウトプットは、見たことのない先進的なものになることもあれば、あえてみなれたものになることもあります。それは我々が描く未来において、ひとつの人格に必要な品格を形状化しているのであって、未来予測のアウトプットなのです。

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