FUKAIRI

emotion API

喜び、怒り、悩み、驚き。人は、さまざまな感情を持って物事の判断を行います。ときにその感情を表現するために言葉を使ったり、表情や態度に出したり、絵を描いたりしますが、想いを形にするのは難しく、苦労が伴うものです。さらに言葉の受け取り方やものの見方、価値観は人によって異なるため、コミュニケーションにおけるずれというものは積み重なっていきます。本人でさえこれが伝えたかったんじゃないんだよなとか、こうゆうことじゃないんだよなと思うことは山のようにあります。この原型をとどめない感情の存在を、数字に置き換えると一体どのような効果が生まれるのか。我々は考えてみました。

2015 年米Microsoft から開発者向けにリリースされたEmotion APIは顔認識技術を使い、写真に写った顔の表情から感情を数値化するシステムです。Anger( 怒り)・Contempt( 軽蔑)・Disgust( 不愉快)・Fear( 恐れ)・Happiness( 幸福)・Neutral( 無関心)・Sadness( 悲しみ)・Surprise( 驚き)の 8 つに感情を数値化する事が出来ます。我々はまず、この機能を利用して携帯でとった写真をアップロードすると感情の数値化が行える状態を作りました。この機能そのものの精度はMicrosoftも実験段階のプラットホームであると述べているように、必ずしも正確な数値が出るとは言い切れません。しかしながら、感情が目に見える数字に置き換えられた瞬間、それは暗黙知から形式知となり、人が判断できる材料となります。

実際に我々が試してみると、数値化された感情をみて「今日は疲れてるみたいだね」「いやそうでもないんだけど」「でも、ここにこう出てる」「ああ、じゃあ、こういうことが先週あったからかな・・・」と、表示された数字を拠り所にコミュニケーションが進みます。これは第三者がオブザーバーとして議論に加わることで建設的な議論が進む感覚に似ています。Emotion APIは感情という曖昧なものを数値化して外に出すことで、主体から離してそれを見つめることが出来るというメリットがあります。感情の投げ合いではなく、数字に対する意見を述べあうことになるため、認識のずれを把握しやすくなるのです。コミュニケーションのファーストアタッチメントを易しいものにするためのだけではなく、ちょっとした気分転換や、新しい会話のきっかけを発見するためにも有効なツールになる可能性を秘めています。

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